2004年12月 第61冊
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宮部みゆき 「本所深川ふしぎ草紙」 新潮文庫
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本年6冊目の宮部みゆき。
今年はこの人に出会えた年でもあり、未読の作家に挑戦する事は大切な事と知った。
宮部さんは時代小説にも関心があり、本書は本所深川の七不思議を採り上げた連作集。
私も本所深川では無いにしろ、この近くに住んでいた時期があって、
やっぱりこの連作集にもその土地がちゃっかり出てきて、にんまり。
隊長はあんまり好きじゃなかったそうだけど、
私は京都の下町育ちなんで、なんとは無く性(しょう)が合った。
表通りの裏にはまさに路地裏が張り巡り、
路地裏から路地裏へと伝って近道をしたもんです。
宮部文学の時代小説は、まさに時代劇よろしく、人情ものが強い。
しんみりと泣かせる話が巧く、この若さでどうしてこういった作品が
産み出せるのか不思議でならない。
ご高齢の女流作家が書いたものと遜色ない出来栄えである。
七不思議と掛け合わせた話も巧く出来ており、決してコジツケにならず、
自然と表題と事件の核心でクロスする様がうまい。
この七不思議めぐりを、著者の「平成お徒歩日記」でも
練り歩いてらっしゃるんで、併読されることをお薦めします。