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2004年12月 第63冊
「忠臣蔵コレクション2 異伝篇」

縄田一男篇  「忠臣蔵コレクション2 異伝篇」 河出文庫

題名末尾にある「異伝篇」という箇所に注目して買った一冊。
こういったキワモノ、と申しましょうか、ヘンテコ視線の作品には目がないです。
執筆人は豪勢だし、異伝篇と抜かすくらいだけあって作品はバラエティ度満点。

 林不忘 「元禄十三年」
 早乙女貢「上野介の亡霊」
 星新一 「薬草の栽培法」
 小松左京「逆臣蔵」
 戸坂康二「夕立と浪人」
 村上元三「義士饅頭」
 岡本綺堂「勘平の死」
 南條範夫「柳沢殿の内意」


解る人には分かる、ニヤリとして下さい。
林不忘、戸坂康二、岡本綺堂の三人の著作物は初めてだったんですが、
他の各作品と併せて全て面白かった。

まず、「元禄十三年」
これは一種のSFで、赤穂事件が起こる前、別の殿様が勅旨供応使になり、
上野介とペアを組むんですが、浅野内匠頭みたいにカーッ!とならない。

逆にコテンパンに上野介をやりこめて、最後は松の廊下で逆に上野介がカーッ!

「星新一」と「小松左京」
星さんの作品は歴史物となっても彼の文体はそのまま。
いささか重みに欠けるきらいはあるけれど、相変わらず目の付け所が「星」ワールド。
赤穂藩の公金使い込みで首が回らなくなった主人公、絶体絶命のときに、江戸からの急報悲報が。

小松左京もやっぱり大した物。
忠臣蔵もので、ちょっと変わったものを、と依頼されてこういったものを書ける、
いや、こういったものを書いちゃうのは頭の構造がチト違う。
歌舞伎が好きな人なんかもしれないが、高師直が主人公。

「戸坂康二」
この人は初めてだったんですが、歌舞伎役者を主人公に据えた構成が新鮮で、
思わずこの作品のシリーズものを古本屋で捜して買ったほど。
初代中村仲蔵が、歌舞伎「忠臣蔵」五段目の定九郎を現行の型に変えたまでの経緯を小説化。

村上元三も名前だけは聞きかじっていたが、実際読んでみて面白い作家。

赤穂義士の寡婦だと称するばぁさんが現われて...と、ありそうな話。


「勘平の死」は「半七捕物帖」からの選択。
随分と苔むした捕物帖だろうとタカぁくくってたんですが、
現代でも一向に色褪せない文体だし、時代物がお好きな方には必読の麗文だと思う。
これも歌舞伎ばなしからの着想だけど、江戸庶民の世界が目に浮かんできそう。

さてさて、とりを勤めまするは我らが南条先生。
あいかわらず南條節炸裂の、うがった斜めからの推理がヒカル。
赤穂事件を柳沢吉保から考察した問答形式。
それでいてユーモアに溢れていて、こういう人が身近にいたら
どんなに人生が楽しくなることだろう。






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