2005年09月 第108冊
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平岩弓枝 『御宿かわせみ7』 文春文庫
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副題「酸漿は殺しの口笛」と申しますが、
酸漿とは「ほおずき」と読みます。
ほおずきは、あの紅い提灯みたいな植物ですね。
これを口の中に入れて、皮袋に空気を入れて潰すと「きゅう」と鳴る、
そうです。
いろんな小説にこの話がノスタルジックに出てくるのですが、
私はこんな経験が無い。
寂しいことです。
本書は「春色大川端」「酸漿は殺しの口笛」「玉菊燈籠の女」
「能役者、清太夫」「冬の月」「雪の朝」の全6編。
今まで散々貶してきた本書シリーズであるが、あれえと云った嬉しい感想。
巻数を追うごとにしみじみとした感が強まってはいるが、なかなかいい
具合になってきたのである。
これくらいのレベルから始まっていれば、このシリーズももっと評価できるのに。
そして次の第8集も読もう、という読後感がある。
主役二人のいちゃいちゃ振りがいつまで続くのやら、
というのが唯一の不満ではあるが、
ミステリ度も少し良くなっているし、なんといっても
お江戸情緒の描写が自然で白々しくない。
シリーズ当初にあったわざとらしいばかりの小道具が減って、それでいて
気負い無く玉菊燈籠などの風物を取り入れていたりして、なかなか良かった。