2005年11月 第138冊
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平岩弓枝 『御宿かわせみ8』 文春文庫
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かわせみシリーズでも最も評価の高い「第8巻」。
これは本書があんまりにも良く出来ているので、
ネットではどう評価されているのかな、と調べたから判った事。
このかわせみシリーズ、私は今まで散々批判的に書いてきましたが、
ここへきて一転、一皮剥けた面白さに変わっています。
どうしたんだろう?
その大きな要因は、「捕り物」に拘らなくなった事。
今までは、
何気ない江戸の風物をまず書きつつ、事件に関する重要人物のエピソード
が挿入。
東吾(探偵役)とるい(御宿かわせみの女主人・ヒロイン)が出会って、
いちゃいちゃしながら事件のあらましを伝える。
刑事役の畝源三郎(同心)と親友の東吾が捜査を開始。
冒頭のエピソードが重要な鍵で、それを知っていた東吾の名推理が冴える。
一件落着。
まぁこんな感じでした。
そんなん、東吾がしってたから判っただけやん、と不満な作品が多かった。
ところが、弓枝先生も変わられた。
事件中心から、人情モノといおうか、感動モノといおうか、
世の中は事件ばかりじゃない、といったスタンスに変わってきた。
この世は、何も悪い事をしようと思ってする人ばかりじゃない。
やむにやまれず、誰かを助けるために、泣き泣きながら、
事を起こしてしまうこともあり、事件になってしまうことも多い。
そこらへんを短い短編に上手く収まっているのである。
ようやくこの「御宿かわせみ」シリーズが大人気なのか、この第8巻にて
分かった。