2006年01月 第152冊
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東直己 『待っていた女・渇き』 ハルキ文庫
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「待っていた女」は超短編で27ページ、
「渇き」が大長編457ページというヘンテコな組み合わせ。
と云うのも、前者は後者へのエピローグ的な序章の役割を担っており、
二作で一つの作品となっているから。
よって、本書は「渇き」と題すべき作品と言えるが、
一体どこが「渇き」なのか?
ハードボイルド作品としては王道な、主人公の職業が私立探偵。
彼はもともと北海道の地元新聞社記者だったが、やばいことに足を
突っ込み過ぎて嵌められる。
誤認逮捕された彼は新聞社を解雇され、妻からは離縁されるが、
愛娘一人が彼を信じてそばに残る。
一見バラバラな事件や依頼をこなしてゆく探偵なのだが、
いつしか彼は大きな黒い影を踏み始めてゆく。
よくあるパターンなんだけど、どことなく探偵が憎めないし、
ストーリーに無理がなく、丹念にこまかな事件が積み上げられてゆく。
続編があるそうなので、これは読んでおきたい。