2008年05月 第275冊
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筒井康隆 「本の森の狩人」 岩波新書
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1993年初版。
92年(H4年)、讀賣新聞朝刊読者欄に掲載された51篇をまとめたもの。
今から15年前の書評・文学論なわけですから、少し古い話しですが、
本の世界はゆっくりしているのでそんなに違和感は無い。
しかし、時々著者が、この人は才能があり今後の活躍が大いに期待が出来る、
なんて絶賛している人が出てくるが、それから15年経った今、
有名になっていないのが悲しい。
藤原智美著「運転士」(芥川賞受賞)など。
筒井氏は関西特有のサービス精神旺盛なおっさんで、
この人の考え方やアピール性が愛おしい。
東京人からして見ればウザったいかもしれないが、関西人なら苦笑したり
ニヤっとしたり、いるよなこういうおっさん、という気分になる。
著者は本来難解で高尚な文学論や文学理論に興味や憧れが強いが、そんな
話しばかりでは誰もついて来ない事も熟知しており、懸命にレベルを
落とした例え話やアホバカな事例を織り込んで説明してくれる。
でも、あくまで、高尚な文学論を語りたい気持ちが滲み出ているのが可笑しい。
本書で紹介されている本は、ほとんどがレベルが高い。
そんな中でも笑えたのは丸山健二著「千日の瑠璃」。
上下二巻の大著で、私は上巻読み終えたところで挫折した悲しい思い出がある。
五百ページも読んだから、何とか読み切ろうと頑張ったのだが、
ああいうのが面白いと思える感性は、私には無い。
ちなみに筒井康隆は絶賛。
文学好きには、人気あるんだろうなぁ、こういう正統派は。
そんなこんなで、私のメルマガを読んで下さっている方々には、
お薦めできない本ですよ。
小難しい本ばかり登場します。