2008年08月 第293冊
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梨木香歩 「西の魔女が死んだ」 新潮文庫
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もっと早くに読んでおけばよかった。
「赤毛のアン」が好きな人なら、この小説世界もきっと好きになれる。
新しいクラスに馴染めなかった少女は、登校拒否を宣言。
それまでのしっかりした態度と成績から、母親もあれこれほじくらず、
祖母のいる田舎へ少女を預ける。
祖母と云うのが英国人で、そのむかし英語教師として来日、
日本人の祖父と結婚、少女の母が産まれ、母は普通の日本人男性と結婚。
ヒロインの少女まいは、クウォーターと云われる状態だ。
クラスでの女子の人間派閥に疲れたまいは、
祖母の暮らす田舎で自信と平穏を取り戻す。
本書の云う「魔女」とは祖母の事で、
祖母に家は代々若干特殊な力を持った家系だった。
魔女と云うには大袈裟かもしれないが、今で言う
サイコキネシスや透視、予知力などが人より強い家系なのだろう。
人より強い力を、自ら律する事で育ててゆく。
何事も自分自身で決断し、それをやり遂げる。
そんな信条を貫くことが魔女になる秘訣だ、と祖母から教わる、まい。
文章から伝わる祖母の愛情や、孫を正しい道へと誘導する仕草が
いじらしくも上手で、こんなおばあさんがいたら素敵だろうな、と思う。
途中、まいと祖母は或る約束をするのだが、ラストでのその約束実現は
鳥肌が立つ。
決してお化けで出てくるとか、超常現象といった鼻白むものでなく、
チャーミングだったおばあちゃんの、まいにだけ伝わる
取って置きの伝言が胸を打つ。
いやぁ、こりゃ、ジーンときました。
2時間もあれば読めてしまうので、是非、ご一読を。
映画も観てみたい。