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2008年12月 第305冊
阿部謹也  「物語ドイツの歴史」   中公新書

阿部謹也  「物語ドイツの歴史」   中公新書

中公新書の「物語〜の歴史」シリーズ。
私にとっては「アメリカ」「中東」続く3冊目。
上記2冊は非常に面白いんで読んで欲しいんだけど、この
「ドイツ」に関しては、材料は面白いのに調理方法が実にイケてない。

ドイツったって広いんだし、それでいて「ドイツ的とは何か」だなんて
こだわりを持ってらっしゃるから、話は堅苦しくなっている。
一橋大の学長をした後も数々の要職を重ね、新書でドイツ史も
書いてみやしたってんだろうが、世間一般の下々の輩にこの学者様文章じゃ、
最後まで読むのは苦労の連続。

ドイツ史は近現代ともなると怒涛の連続。
だから、さすがに誰が書いても面白くないはずが無いのだが、
それでも視点が学者様してて詰まらない。
編集者に一橋大出身者がいたのか、ドイツ史といえばアベキンヤなのかは
知らないが、是非、もっと面白く文章が書ける人に一から書き直してもらいたい。

さすが一生をドイツに専念した人だけあって神聖ローマ帝国以前いついて、
長々とドイツの黎明期を論じ始める事で本書は始まるのだが、
嗚呼なんと重苦しい導入部か。
最近はドイツ音楽、とりわけベトベンのピアノ・ソナタなぞも聴き直していると
巻末で書かれていらっしゃるが、ドイツ史やっててベトベンのピアノ・ソナタだなんて。
ドイツをつぶさに研究してきた人がこれだから、日本のベトベン崇拝も
まだまだ続くのだろう。

海老沢や小塩節のモーツァルト賛もそうだが、独墺音楽といえば
いまだにバッハ・モーツァルト・ベートーヴェン。
ちょっと広がってブラームスかワーグナー。
どうしてありきたりなもんしか聴かないんだろうねぇ。
メンデルスゾーンやマーラーはドイツじゃ無いってか?

ナチスに退廃音楽の烙印押された音楽家にのめり込んでます、とか、
ベトベンやブラームスの影で頑張ってた作曲家にも面白い人がいたんですよ、
とか、そういった話をこっちは聞きたいのに、そんな話はぜーんぜんナシ。
そもそもドイツ史を一生の仕事に捧げる嗜好からして、
音楽も超保守派なんだろうな。

勉強だと思ってドイツ史を読まなきゃいけない人は本書を選択されるんだろうが、
こんな文章読んでちゃ、ますます歴史嫌いになるんじゃないの?
「物語」と銘打ってますが、学術書みたいな291ページ。
「物語アメリカの歴史」とは好対照な文章、一冊。






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