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2009年07月 第332冊
中野雄  「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」  文春新書

中野雄  「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」  文春新書

センターラインを堂々と生きてきた人の音楽嗜好、ってな感じ、
コテコテのウィーン・フィル賛美。

東大法学部卒、銀行を経てオーディオメーカー、
レコード事業の役員に連なり、音楽プロでユーサーとして活躍。

野球は巨人を応援してた方が面白いし、オリンピックやワールドカップも
やっぱ優勝者が好き。だってだって、ナンバーワンが一番良い筈だもん。
著者はきっとそんな人なんだろな、と悪く想像してしまう。

さすがウィーン・フィルなら、どんなオケと比べたってどうにも分が悪い。
しかしウィーン・フィルがいつだって良いのか、今だって良いのか、
それより良いオケが現在進行形ではいないのか?
そんな目線で考えてしまう私ですから、本書とは違和感ありあり。
ウィーン・フィル至上主義なんて、これからの新世代にとっては、
旧き佳き時代の話なんじゃない?

そうはいっても、ウィーン・フィル。
こぼれ話が満載で、団員と親しい著者ならではの、美味し過ぎるネタ多し。
反主流派クラシック・ファンとしてもウィーン・フィルは無視できない巨人だし、
無関心ではいられない存在だが、地盤沈下が避けられない現実には目を向けていない。

マエストロ(巨匠)がいなくなった点を声高らかに書き綴っている勇気は
評価したいが、この著者は指揮者にくっついて仕事してるんじゃなくて
ウィーン・フィル団員にくっついて仕事獲っているパターンだから
こう書けるんじゃないの?なんて毒を吐いてしまう。

今後の仕事面に影響するウィーン・フィル本丸への批判は弱いってんじゃ、
ちょっとね。
結局、招聘指揮者を選択してるのはウィーン・フィルなんだし、
自分達が気持ち良く弾きたいばっかりにツマラナクテやさしい指揮者ばかり
選んじゃう現在になったんじゃないの?

昔みたいな鬼軍曹指揮者にシゴキまくって貰った方が、
結局は伝説の演奏が出来上がるんだけどね。
現役指揮者で私が評価できるのは、ギーレン、パーヴォ・ヤルヴィ、
マッケラス、スラトキン、つい最近急死したヒコックスくらい。

ヒコックスが早死にしたのは、本当に痛い。

これら全てが、ウィーン・フィルとは余り仕事してないんだよね。
こういった人たちをウィーン・フィルも呼ばなきゃならんし、
呼んでこなかったからこそ上記指揮者は切磋琢磨、臥薪嘗胆できたのかもしれない。

いずれにせよ、最近のウィーン・フィルと組んでる最近の指揮者はフツーばっか。
この辺を著者も大いに不安視し、警告しているところは評価できる。






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