2010年12月 第424冊
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奥田英朗 「イン・ザ・プール」 文春文庫
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精神科医と患者のとんでもエピソードからなる、短編5編。
こいつぁ面白いや、と第1編(憂鬱脱却のため水泳にのめり込む話)は
読んだが、編を追う毎にインパクトが弱まってくる。
ベストセラーになって、映画化されて、本書の次回作「空中ブランコ」は
直木賞と、今じゃ奥田英朗の出世作となったわけだが、奥田作品全体を
見通せばそこまで評価できるかな?というのが正直な感想。
総合病院の御曹司?は精神科医で、各科で放り出された患者が
最後の頼みと精神科のある地下にやって来る。
思い起こせば、各学年で一二を競う天才秀才は医者に
なっている可能性が高い。そんな彼らは、明朗活発で
スポーツマンというより、一癖あるおとなしい人が多かった。
そこへ以って、開業医の子供であるわけだから、少し変わった
医者がいる設定は実にノーマル。
変わった精神科医に、変わった症状の患者がやって来る。
治療法も変わっていれば、成り行きや結末も変わっている。
小説としてはなかなか良く出来た基本設定なんだが、
これが何パターンも続くと胸焼けしてくるのは私だけだろうか。
面白い事は確かだから、各編、時間を空けて時々読んだ方が良かったのかも。
もしくは数冊の短編集を著者も変えて、交代交代しながら
読めば良かったのかも。
そうは言いつつ、当然次作「空中ブランコ」は読むつもり。
奥田英朗自体は大好きだから、これからも読んでいきたい。