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2012年09月 第544冊
南條範夫「夢幻の疾走者 織田信長」廣済堂
南條範夫 「夢幻の疾走者 織田信長」 廣済堂

単行本271ページ、平成3年初版。
南條ファンしか探してまでは読まないでしょうが、
こういった面白い本が書店からは消えているのは悲しいことです。
くっだらない本は、次から次へと並べられているのにっ。

半分近くが織田信長。
後半は浅井長政、松永久秀、明智光秀、柴田勝家、丹羽長秀。

凡庸な信長本なら、後半に秀吉と家康は外さないところだが、
我が南條はそうはしない。

ちょっとちょっとメジャーと違った事をするから
司馬遼太郎や池波正太郎ほど残っていないんだとも言えるし、
だからこそ私のように熱烈に魅せられた者も出てくるのだろう。

結局は自分の主張が強ければ強いほど結果の幅も広がってくる。
でも大丈夫♪きっと南條はいずれ人気再興すると思う。

本書で特に注目したのは、
丹羽長秀にかなりの分量を割いていること。

木下藤吉郎が羽柴秀吉と名乗りを変えた時、
羽柴の「羽」は「丹羽」から、「柴」は「柴田」から採ったように、
柴田勝家と並んで織田家の重鎮だったのが丹羽長秀。

柴田勝家は壮絶な北之庄クライマックスを演じ、
豊臣秀吉物語に欠かせない山場として必ず出てくる。

しかし一方、丹羽長秀の最期は滋味で哀しい。
選択を誤った凡将ならではの最期なのだ。

清洲会議で秀吉にいいように言いくるめられ、
まさか秀吉の天下に雪崩れ込むとも想像できず、
気付けば若狭に越前と加賀の一部を加えた約123万石を
あてがわれたが、秀吉の家来同様に成り下がってしまう。

今さら気付いた自分の馬鹿さ加減にも腹立たしく、
しかしここまで生き延びてくれば丹羽家というお家も大事。

長秀の採った最期の修羅は、実に哀しい。
今で言うガンに倒れた長秀は、
自身で腹かっさばいで病巣をえぐり出す。
それは亀の子のような形をしていたという。

主君織田家を守るため秀吉に加担したはずが、
いつしか秀吉の天下取りに協力していただけでなく、
秀吉の家来にまで成り下がっていた。

その悔しさから自裁した訳だが、自裁したとなると
秀吉へ無言の抵抗をしたことと同然になる。

そこで自らガンを取ったことにするしかなかった長秀の胸中。
死んでまで、秀吉への遠慮で覆われた人生だった。
ちなみに、丹羽家は二本松十万石となって明治まで存続したが、
長秀がこさえた123万石には遠く及ばない。






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