2013年1月 第556冊
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黒川博行 「海の稜線」 創元推理文庫
大阪府警捜査一課のブン&総長シリーズ第1作。
著者黒川氏は、同じ大阪府警捜査一課で黒豆コンビ3作
「二度のお別れ」「雨に殺せば」「八号古墳に消えて」を書いたのに、
本書ではわざわざ他の班で他のコンビ(ブン&総長)を登場させて
仕切り直している。
私が思うに、前の黒豆コンビは豆ちゃんが、かしこ過ぎた。
大阪のボテボテ・コンビを描きたかったのに、
ちょっと出来すぎにしてしまったのが、アダになったんだろう。
そうは言っても、主役二人がアホだったら事件は解決できない。
そこで本書に登場させたのが、「いやぁな」東京人。
著者は、東京人にコンプレックスがあるようで、
東京から来た若手キャリアを、徹底的に嫌な人物像にしている。
いな、そうしようとして逆に、主人公ブンを嫌な大阪人にしてしまっている。
なぜなら、折角するどい指摘や推理を東京エリートがしているのに、
ブンは反感が先に立って、チャチャばかり入れる。
老練な相棒が場を収めて話は進むが、冷静な東京エリートと
カッカしてる大阪ブンの構図では、大阪の方がバカみたいに見えてしまう。
最後の最後で、大阪人の力技で事件解決するんだろうと
期待したが、それもない。東京人の鋭い推理や裏取りがなければ、
事件は解決しなかった流れに終わる。
著者黒川氏は、もっとも書きたい大阪ボテボテ・コンビを登場させつつ、
東京人との対立構造で話を膨らませたかったんだろうが、私には
「いやぁな」遣り取りにしか読めなかった。
特に、主人公ブンさんがバカすぎて文句ばっかり。
こいつの考えている方向だけだったら、犯人の思う壷に嵌まり込んだはず。
次回は、大阪人対京都人だそうで。
私は京都人なので、それこそきっちり読まなぁかんと鼻息荒くなっております。