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2013年9月 第605冊
南條範夫 「あやつり組由来記」 角川文庫
南條範夫 「あやつり組由来記」 角川文庫

永らく探していた角川文庫の廃刊。
立川の古書市で、210円売りされていたのには驚いた。
探すこと二十年。

ネットで探せば簡単入手できれるけど、店先で安く見つけてこそ嬉しいんだよ。
今、探している南條範夫本は、「暴力の日本史」カッパ・ブックス。

1970年初版で古いが、カッパ・ブックスだから出回ってるはず。
よほど売れなかったのか、何か問題でもあったのか、
いまだ店頭では見つからない。

本書は5編からなる短編集。
・「あやつり組由来記」
・「乞食会社と泥棒会社」
・「閨房禁令」
・「戦国外方滅方党」
・「天保瘋癲族」

表題作「あやつり組由来記」は「燈台記」文春文庫にも含められた好編。
経済学者でもあった著者ならではの江戸時代経済小説にして、
賄賂ロビー活動小説。

江戸の豪商を組合化して、まとまった賄賂資金を作る。
それを主人公は幕府首脳や要路にばら撒き、豪商に不利な政策を
封じ込める交渉を行う。

清廉潔白な政治を目指した天保の改革を見事に絡ませ、
本当にあった話かのように読ませる。
似たようなものはあったのだろうナと思わせる。

「乞食会社と泥棒会社」は明治開化もの。
明治維新で職を失った御家人は、落ちるところまで落ちて乞食となってしまう。

しかしそれを逆手に乞食を株式会社化に組織立ててゆく。
一方ライバルの男も泥棒まで落ちぶれたが、乞食会社にヒントを得て、
彼も泥棒会社を設立する。ところが・・・。

「閨房禁令」は二代将軍秀忠の次男、駿河大納言忠長の駿府が舞台。
この人は三代将軍家光の弟ながら、一時は時期将軍とも期待され、
本人もその気になってしまった。

結局春日の局らの暗躍で、しがない大名に落とされ、鬱々たる青春を送ってしまう。

その鬱々たるや様々な奇奇怪怪な小説舞台として利用されているが、
本書も最大限にそれは活かされている。

閨房の素晴らしさを知った忠長は、家来や庶民までもが
味わっている現実に、不快を表明するのだ。
「戦国外方滅方党」は珍しくも、伊勢の北畠家が舞台。
戦国武将にして、塚原卜伝から秘伝を授けられた武道無双、
北畠具教の幼少期が描かれる。

著者の想像が創造となりすぎて、根も葉もない話のように思われた。

「天保瘋癲族」とは時代がかった題名だなぁ。
天保という厳しい時代も、働きもせず享楽な日々をすごした若者と女。
しかしカネに苦しむ男女もおり、その悲劇が描かれる。







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